がん患者さんのためのアピアランスケアガイド

がんの治療中は、脱毛や肌の変化、爪の変化、手術による傷、皮膚炎といったような、さまざまな外見の変化が起こることがあります。 このような外見の変化による患者さんのストレスを軽減するためのケアを「アピアランスケア」といい、性別や年齢を問わず、治療による外見の変化が気になるすべての患者さんに行われるようになっています。
治療技術の進歩によって抗がん剤や放射線治療は、入院をせずに外来で行うことが可能となり、仕事や学業を続けながら社会のなかで生活を送れる時代になってきました。 同時にこうした社会変化を背景にアピアランスケアを必要とする患者さんも増えてきました。

化学療法 ( 抗がん剤治療 )	脱毛（頭髪、まゆげ、まつげ）、手足症候群、皮膚色素沈着、爪の割れやはがれ、変色 むくみなど
分子標的薬	手足症候群 ざ瘡様皮疹 皮膚乾燥（乾皮症） 爪周囲炎など
放射線療法	放射線性皮膚炎 照射部位の脱毛など
手術療法	手術痕 身体の部分的な欠損 むくみなど

当院では、脱毛などの表面的な問題の解決を図りつつ、患者さんの疾患や心理を理解した上でその悩みや不安を汲み取ったアドバイスしていくことを大切にしています。 相談を受けた場合は、私たちが蓄積したこれまでの経験をもとに、患者さんの生活や好みに合う方法を一緒に考えていきます。 正解が１つではないので、自分らしく、いきいきと過ごせる方法を一緒に見つけていきましょう。

抗がん剤治療や放射線治療の影響で、毛を作るもとになる細胞の成長が障害を受け、成長期の毛髪が 抜けることがあります。毛髪が抜けるかどうかやその程度は治療法によって異なりますし、すべての治療で毛髪が抜けるわけではありません。治療で脱毛がおこるかについては、主治医に聞いてみましょう。 脱毛は、治療の一時的な副作用であり、多くの場合は治療が終われば再び生えてきます。

• 発毛して間もない頃は毛質が柔らかく、薬剤により髪が傷みやすいため、カラーやパーマは再発毛から６カ月後以降に行いましょう。

上記の項目に１つでも当てはまる場合は使用・施術を控えましょう。
上記に該当がなくても、自分でカラーリングを行うと地肌に薬剤が付着する可能性があるので理美容師に施術してもらいましょう。

抗がん剤の影響で肌の新陳代謝が悪くなるため、色素沈着（皮膚の黒ずみ）、皮疹（ぶつぶつ、ザラザラ）、乾燥（カサカサ、痒み）といった症状が、治療開始後約 1 週間～ 3 週間程度で出現します。症状の程度は個人差がありますが、予防的なスキンケアを行うことで軽減させることができます。

色素沈着とは、皮膚や爪の黒ずみを指します。手足や顔など身体の一部に黒い斑点が出ることもあります。また、表皮の基底層には人の肌の色を決めるメラニン色素をつくる細胞があります。色素沈着が起こるのは、その細胞が活発になって、メラニン細胞が増えるからだと考えられています。下記の抗がん剤は殺細胞性抗がん剤と呼ばれています。殺細胞性抗がん剤では色素の増強や色素沈着が生じやすいと言われています。下記の薬剤以外でも生じる可能性はありますので、詳しくは主治医にお尋ねください。

◇殺細胞性抗がん剤
アルキル化薬（シクロホスファミド、ダカルバジン等）、白銀化合物（シスプラチン、カルボプラチン等）、代謝拮抗薬（フルオロウラシル、カペシタビン等）、トポイソメラーゼ阻害薬（イリノテカン、ノギテカン、エトポシド等）、抗癌抗生物質（ブレオマイシンやアクチノマイシン D 等）、微小管作用抗がん剤（ビンカアルカロイド系、タキサン系）

治療が始まったら、症状が出始める前から予防的に行ないましょう。習慣にすることが大切です。

下記の “スキンケアのポイント” を参考にして楽しく続けられるようにしましょう。
ケア用品は、治療前に使っているものを無理に変える必要はありません。好きな香りや好きな色で日々のケアを楽しみましょう。 また、洗顔時や化粧品を塗る際には、皮膚を強く擦ることは避けましょう。

抗癌剤の影響で爪の成長がうまくできなくなり、乾燥して割れやすくなる、変色、変形といった症状が治療後約1～3週間程度で出現します。症状がひどくなると爪の周りの皮膚が炎症を起こし、出血や痛みを伴うことがあります。症状の程度は個人差があります。

治療が始まったら、症状が出始める前から予防的に行ないましょう。習慣にすることが大切です。

手を洗った後などに、ハンドクリームやネイルオイルを爪周りにもしっかりなじませましょう。割れやすい状態の爪には爪切りはNGです。爪やすりで形を整えましょう。予防的にネイルカラーを塗って爪を保護することも効果的です。爪のひび割れ予防目的でトップコートを使用することもおすすめします。男性の方や、お仕事、学校などの都合でツヤがあるものを使いたくない時は、マットタイプのトップコートを使うと目立たずにカバーできます。

ジェルネイルは剝がす時に爪への負担が強いのでお勧めしません。通常のネイルポリッシュなら使用しても大丈夫です。
オフするときは除光液を使い、こすり過ぎないようにしましょう。
※入院中は健康状態の観察のため、ネイル使用は控えていただいています。

近年、社会及び学校生活と治療の両方を行われている方も増加しています。
ここでは、患者さんが「自分らしく過ごせる」ための Q＆A をご紹介していきます。

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当院では、毎月第２木曜日、第４火曜日にアピアランスケアに関する相談会を開催しています。
脱毛のケアや爪のケア、メイクについて相談したい方、ウィッグを試着してみたい方、治療中の方やこれから治療を始められる方など、お気軽にご利用ください。