手術支援ロボット ダ・ヴィンチXiのご紹介

手術支援ロボット ダ・ヴィンチXiのご紹介

ダヴィンチXiについて

ダヴィンチXiは最先端の手術支援ロボットです。米国のIntuitive Surgical社で開発された内視鏡下手術支援ロボットで初期モデルのda Vinci(standard)は1999年より臨床用機器として販売されています。ダヴィンチXiは第4世代の手術支援ロボットで、ビジョンカート、ペーシェントカート、サージョンコンソールの3つから構成されます(図1)。

図1. ダヴィンチXiの構成

ビジョンカート
ビジョンカート
ペーシェントカート
ペーシェントカート
サージョンコンソール
サージョンコンソール
一般的にロボットとは人工知能を搭載したコンピュータを連想しますが、ダヴィンチは実際に手術手順を計画・実行するロボットではなく、あくまでも術者の手指の動きを再現する“手術支援”のためのシステムです(図2)。

図2. サージョンコンソール操作写真

サージョンコンソール操作写真
つまり、術者は3Dモニタを見ながら遠隔操作で装置を動かすと、その手の動きがサージョンコンソールからペーシェントカートに光ケーブルを通じて忠実に伝わり、インスツルメント(ロボットアームに取り付ける手術用鉗子のこと)や内視鏡カメラ(図3)が連動し手術手技を行います。また、内視鏡カメラで得られた体腔内の映像はリアルタイムにビジョンカートに送られて手術室内の多くのモニタに映し出されます(図4)。

図3. インスツルメントや内視鏡カメラ

インスツルメント
インスツルメント
内視鏡カメラ
内視鏡カメラ
内視鏡カメラ(使用時)
内視鏡カメラ(使用時)

図4. 手術室風景

手術室風景(泌尿器科)
手術室風景(泌尿器科)
手術室風景(消化器外科)
手術室風景(消化器外科)

 「ダヴィンチ」手術は、これまでの内視鏡視下手術にロボットの機能を組み合わせて発展させた手術で、1~2cmの小さな切開創から内視鏡カメラとロボットアームを挿入し、高度な内視鏡視下手術を可能にします。

当院ロボット手術の特徴

 平成26年3月に手術支援ロボットダヴィンチ Siを導入し、当初は泌尿器科の腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術、腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術の2術式にロボット支援下手術が行われてきました。平成30年より、新たに5術式、令和2年は7術式が保険収載され、これまでの泌尿器科に加え、現在では心臓血管外科、消化器外科、呼吸器外科、女性診療科(婦人科腫瘍)、肝胆膵外科においてもロボット支援下手術を実施しています。また、今後の保険改訂では更に術式の拡大が確実視されています。

  • ロボット支援下手術保険収載の全診療科(泌尿器科、消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科、女性診療科、肝胆膵外科)にて実施しています。
  • 前世代ダヴィンチSiからの豊富な実績、スタッフの強化体制を実現しています。
  • 最新機種であるダヴィンチXiの2台体制で、ロボット支援下手術が毎日実施されています。
  • 18術式に対してロボット支援下手術が適応されています。(令和4年10月現在)
  • 通算1,100症例以上のロボット支援下手術の実績
  • 泌尿器科領域では通算800症例以上の実績
  • ロボット支援下腎部分切除術は症例数2年連続西日本1位
  • 心臓血管外科では全国屈指のロボット支援下手術実績

メリット・デメリット

メリット

 最大のメリットは繊細で緻密な手術が可能ということです。ダヴィンチは手振れが補正可能で、さらに手指の可動幅に対しインスツルメントの先端の可動幅を最大1/5に減じてくれる機能が備わっています。そのため、骨盤の中など狭い場所でも、目標としている部位に直接アプローチすることができ、細かい操作が要求される神経を温存する手術においても非常に繊細で緻密な手術操作が可能です。また、3Dカメラで奥行きのある体腔内を立体的に映しだすことが可能で、ズーム機能により最大15倍の患部を拡大視野でとらえることが可能です。結果として、出血の少ない、患者さんの体にやさしい低侵襲手術が可能となります。また傷が1~2cmと小さいので、術後の回復が早く、社会復帰が早期にできるというメリットもあります。

  • 出血量が開腹手術に比較して少ない
  • 傷口が小さいため術後疼痛が比較的少なく、体への負担軽減が可能
  • 周囲の神経などを傷つけてしまう危険が少なく、機能温存が向上
  • 術後早期回復が期待できる

デメリット

 ロボット支援下手術では触覚が欠如するため、術野映像の3Dモニタからの視覚と経験により手術部位の状態を認知します。そのため、下記トレーニングを行っています。

 ダヴィンチを導入すれば、すぐに次の日から使用できるものではありません。ロボット手術を行うには診療科毎に認定を受けなければいけません。術者、助手、麻酔科医師、看護師、臨床工学技士から構成されるチームで、シミュレータを用いたトレーニング、自施設手術室において模擬患者の体位作成やダヴィンチの操作方法が必要になります。その後、ロボット支援下手術を実際に見学し、知識と技術の共有、手術手技向上を行います。

 手術の大原則は安全かつ確実に手術を完遂することです。手術を受けた患者さんから当院で手術を受けて良かったと感じていただけるように取り組んでいきたいと思います。当院では、低侵襲かつ安全性の高い手術を目指して日々切磋琢磨しております。何か疑問がございましたら、ぜひ各診療科へご相談ください。

ダヴィンチによるロボット支援手術の費用負担(令和5年11月現在)

当院では、ダヴィンチによるロボット支援手術は以下術式が保険適用となっております。
詳細につきましては各診療科にお問い合わせください。
その他の疾患・術式については、保険適応ではないため自由診療となり、全額自己負担となります。
また、入院・手術に関わる費用は年齢や年収、健康保険制度によって異なります。

保険適用

  • 胸腔鏡下食道悪性腫瘍手術
  • 腹腔鏡下胃切除術
  • 腹腔鏡下噴門側胃切除術
  • 腹腔鏡下胃全摘術
  • 腹腔鏡下直腸切除・切断術
  • 胸腔鏡下弁形成術
  • 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(区域切除)(肺葉切除又は1肺葉を超えるもの)
  • 胸腔鏡下縦隔悪性腫瘍手術
  • 胸腔鏡下良性縦隔腫瘍手術
  • 胸腔鏡下拡大胸腺摘出術
  • 腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術
  • 腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術
  • 腹腔鏡下膀胱悪性腫瘍手術
  • 腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術(子宮体がんに限る)
  • 腹腔鏡下腎盂形成手術
  • 腹腔鏡下膵頭部腫瘍切除術
  • 腹腔鏡下膵体尾部切除術
  • 腹腔鏡下肝切除術
  • 腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術
  • 腹腔鏡下副腎摘出手術
  • 腹腔鏡下副腎髄質腫瘍摘出手術

ロボット支援手術執刀ライセンス保有医師

診療科名 疾患名 執刀医氏名 資格等
消化器外科 食道癌 李 栄柱 日本内視鏡外科学会認定技術認定医(食道)
ロボット支援手術Certificate(術者)
日本内視鏡外科学会 ロボット支援手術プロクター(食道)
豊川 貴弘 日本内視鏡外科学会認定技術認定医(胃)
ロボット支援手術Certificate(術者)
日本内視鏡外科学会 ロボット支援手術プロクター(食道)
胃癌 田中 浩明 日本内視鏡外科学会認定技術認定医(胃)
ロボット支援手術Certificate(術者)
吉井 真美 日本内視鏡外科学会認定技術認定医(胃)
ロボット支援手術Certificate(術者)
直腸癌/結腸癌 渋谷 雅常 日本内視鏡外科学会認定技術認定医(大腸)
ロボット支援手術Certificate(術者)
福岡 達成 日本内視鏡外科学会認定技術認定医(大腸)
ロボット支援手術Certificate(術者)
前田 清 日本内視鏡外科学会認定技術認定医(大腸)
ロボット支援手術Certificate(術者)
日本内視鏡外科学会 ロボット支援手術プロクター(直腸)
結腸癌 渋谷 雅常 ロボット支援手術Certificate(術者)
日本内視鏡外科学会認定技術認定医(大腸)
心臓血管外科 僧帽弁形成術
三尖弁形成術
高橋 洋介 ロボット支援手術Certificate(術者)
ロボット支援心臓手術プロクター
肝胆膵外科 膵腫瘍
肝腫瘍
石沢 武彰 日本内視鏡外科学会認定技術認定医(肝)
ロボット支援手術Certificate(術者)
日本内視鏡外科学会 ロボット支援手術プロクター(膵体尾部切除)
木村 健次郎 日本内視鏡外科学会認定技術認定医(膵)
ロボット支援手術Certificate(術者)
呼吸器外科 原発性肺癌
転移性肺腫瘍
縦隔腫瘍
重症筋無力症
泉 信博 ロボット支援手術Certificate(術者)
月岡 卓馬 ロボット支援手術Certificate(術者)
小松 弘明 ロボット支援手術Certificate(術者)
ロボット支援手術プロクター
泌尿器科 前立腺がん
腎臓がん
膀胱がん
内田 潤次 ロボット支援手術Certificate(術者)
鞍作 克之 ロボット支援手術Certificate(術者)
山﨑 健史 ロボット支援手術Certificate(術者)
日本泌尿器内視鏡学会 泌尿器ロボット支援手術プロクター(前立腺がん、腎臓がん、膀胱がん)
町田 裕一 ロボット支援手術Certificate(術者)
加藤 実 ロボット支援手術Certificate(術者)
大年 太陽 ロボット支援手術Certificate(術者)
平山 幸良 ロボット支援手術Certificate(術者)
行松 直 ロボット支援手術Certificate(術者)
女性診療科 子宮体癌 山内 真 婦人科腫瘍専門医
ロボット支援手術Certificate(術者)
福田 武史 婦人科腫瘍専門医
ロボット支援手術Certificate(術者)

当院におけるロボット支援手術の実績

診療科名 手術名 件数
消化器外科 胸腔鏡下食道悪性腫瘍手術 80
腹腔鏡下幽門側胃切除術 61
腹腔鏡下噴門側胃切除術 14
腹腔鏡下胃全摘術 7
腹腔鏡下直腸切除・切断術 75
腹腔鏡下結腸切除術 5
集計期間:2018年1月~2022年10月
心臓血管外科 胸腔鏡下弁形成術(三尖弁形成併施例を含む) 100
集計期間:2018年6月~2021年12月
肝胆膵外科 腹腔鏡下膵体尾部腫瘍切除術 8
腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術 0
集計期間:2021年4月~2022年3月
呼吸器外科 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術 59
縦隔腫瘍摘出術 47
拡大胸腺摘出術 2
集計期間:2019年8月~2022年10月
泌尿器科 腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術 58
腹腔鏡下腎悪性手術 85
腹腔鏡下膀胱悪性腫瘍手術 27
腹腔鏡下腎盂形成術 1
集計期間:2021年4月~2022年3月
女性診療科 腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術(子宮体がんに限る) 13
集計期間:2020年10月~2021年11月