不適合情報

2021年12月1日

  • 適格基準・除外基準
  • 症例登録・割付
  • 重大
  • 臨床研究法下の研究

〇#212001 カテゴリー 症例登録・割付, 適格基準・除外基準に関して発生した不適合事例(組み入れ症例の超過)

概要

(1項「序文」 省略)

2 対象研究
 研究名:切除不能神経内分泌腫瘍に対するカペシタビン、テモゾロミド併用化学療法(CAPTEM)の安全性、有用性に関する検討[ 臨床第二相試験研究]
 診療科:臨床腫瘍科
 目標症例数:30 例
 研究期間:2015年 2月1日~ 2023年1月31日(登録期間:~ 2020年1月31日)
 本研究は、法の施行前(施行日:2018年4月1日)から実施されており、当時の指針の介入研究として倫理委員会で承認( 2015年1月8日)、 CRB の承認後(2019年2月25日)に jRCT(Japan Registry of Clinical Trials 、臨床研究実施計画・研究概要公開システム) にて公表(2019年3月13日)されて特定臨床研究として実施している。

3 本研究における不適合事項
(1)適格基準の不遵守(重大な不適合)
 研究計画書で規定される適格基準に該当しない研究対象者の2症例が登録されていた。
(2)症例数の超過(重大な不適合)
 研究計画書では目標症例数30 例と予定していたが、 35例の患者が登録されていた。

4 事案経過
 2021年2月18日に、 横浜市立大学 附属病院次世代臨床研究センター(以下「Y-NEXT」という 。) にある CRB 事務局は、研究者から提出された定期報告書の累積症例数について前年度等の報告等と比較確認したところ、累積症例数に齟齬があり、 実施症例数の問い合わせを行った。
 2021年2月22日に、 研究者から、 「累積症例数の確認及び症例に関する報告の取りまとめ中に1例の逸脱に気が付いたので、どのように対応すればよいか」との確認があり、 Y-NEXTから逸脱症例の内容について研究者あてに問い合わせを行った。
2021年2月24日に、 本研究は適格基準に「手術歴の有無は問わないが、何らかの薬物療法(抗腫瘍療法)に対して、抵抗性になり、本治療前の段階で、明らかな腫瘍の増大傾向が認められる症例とする。」と明記されているが、「2016年10月に該当研究に参加した1症例について、 この適格基準を満たさず、診断後薬物療法を行なっていないにも かかわらず組み入れてしまい、臨床研究の治療を行なった」 旨、 研究者から回答があった。 また併せて「倫理上は問題ないとの認識だったが、本研究の研究計画書からの逸脱と判断した」との回答があった。
 2021年3月12日 に、 研究責任医師から不適合報告書が提出された。
 2021年3月19日に、 当該不適合報告書に関して、 Y-NEXT で は 重大な不適合事案の可能性があると判断したため、不適合の内容確認、発生した理由、経過及び CRBへの審議内容について、Y-NEXT とともに研究責任医師等に対してヒアリングを実施し、その結果、 適格基準をきちんと確認せずに参加をしてい たことが判明した。重大な不適合にあたるのではないかという意見も出たが、研究者側は 重大ではないという判断であったため、まずは研究者の見解を尊重することとしCRBの意見に従うように指示をし、CRBには定期報告の際 「不適合報告書」として報告することとなった。
 2021年5月6日に、CRBにおいて本件に関して審議を行なった。委員から当該不適合事案 とする次の2点について、結果的に患者に被害がなかったとしても、研究者が事前に分かっていながら研究計画書から逸脱したことは重大と言わざるを得ないと意見があり、研究者に再度検討してもらうこととし、 継続審議となった。
  ①適格基準に該当しない患者と分かっていながら被験者に組み入れたこと 。
  ②計画では30例の予定であったが、 35 例で研究実施したこと 。
 CRBの審査結果を踏まえ、 Y-NEXTと研究責任医師が詳細説明及び検討を行い、 2021年5月20日に研究責任医師から「重大な不適合事案報告書」 として 再提出された。翌21日、附属病院長及び Y-NEXTで打ち合わせを行い、以下の対応を決定した。
  ① 重大な不適合事案として7月開催のCRBへ報告書を提出すること。
  ②諮るにあたり、附属病院長のガバナンスのもとで調査委員会を設置し、事案調査、原因究明及び再発防止策について検討のうえ報告書をとりまとめ、再発防止に向けて取り組んでいくこと。
 2021年6月17日に、研究責任医師から「重大な不適合事案報告書」 (資料1中「別添資料1」)が 再度提出された。 その際、 研究責任医師による事実確認及び分担医師へのヒアリングを実施した結果として、適格基準に 該当しない症例が1例追加された (この時点で研究責任 医師から合計2症例の適格基準違反の報告書に変更。

(以下原文参照)

是正措置(第4 再発防止策及び今後の取組)

1 臨床腫瘍科での再発防止策
 診療科責任者でもある本研究の研究責任医師は、重大な不適合報告書の提出及び調査委員会による調査後、速やかに以下に示す再発防止策を取り組み、実施している。
(1)研究業務フローの作成
 診療科として、実施する研究全体の体制 ・ 流れを確認し、今後は研究計画書毎に業務フローを作成する。
(2)研究カンファランスの実施
 診療科で1か月に1回研究カンファランスを行い、実施されている研究について以下を特に注意して確認を実施している。
 ア  適切な登録状況
  ・研究対象の候補者がいつ来院し同意説明の機会が得られるのかを事前に確認
  ・必要な書類を準備すること
  ・書類が作成されたこと
  ・必要な検査が 実施されていること
 イ CRF の作成状況
 ウ モニタリングの実施状況
 エ 研究の進捗状況
 オ 重篤な有害事象の発生状況
 なお、2021年12月現在臨床腫瘍科で現在実施中の臨床研究は、本研究以外でゲノム研究3件及び観察研究7件である。当研究カンファランスにおいて、研究計画書に沿って適切に対応していることを確認して、必要に応じその状況を附属病院長に報告する。
(3)学習会の実施
 診療科内での学習会をY-NEXTに依頼し行うとともに、臨床研究の適正実施に関して Y-NEXT に継続的に支援を依頼できるように連携を密に取っている。
(4)セミナーへの参加
 Y-NEXTが主催する臨床研究セミナーに積極的に参加 し、今後も継続する。
(5)ワークシート等の作成
 介入研究においてはY-NEXT専門職と協力して、通常の診療記録作成時に見逃す可能性のある項目を含めた臨床研究に必要と考えるワークシートを作成して使用することを合意している。


【調査委員会から提言された 再発予防策の取り組み】
 調査委員会より 「診療科として研究対象者登録完了時の運用の強化」 が提言された。本提言は、上記に示した再発防止策の取り組みと重複する内容もあるが、新規の臨床研究を検討する際には、Y-NEXT専門職の協力を受けながら、次の点を特に明確にして研究計画書又は ワークシートに反映させるものとする。
 ・研究対象者の登録完了に関する基準
 ・登録時のチェック体制に関する詳細な方法
 ・登録完了時とプロトコル治療開始の時間的関係を第三者に理解できるように 「見える化」


2 組織としての再発防止策
 調査委員会の報告を踏まえ、2021年5月12日に厚生労働省に提出された 報告書 『「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に対する重大な不適合に関する調査報告及び再発防止策』における「第9再発防止策2組織としての再発防止(3)医学系指針等の違反に関する再発防止策」 資料1 中「 別添資料6 」 に記されている再発防止策を適宜適切に実施するよう徹底する。
 また、調査委員会からの 提言を踏まえ、下記のとおり当該再発防止を実行する 。
(1)研究支援・教育研修の充実
 本学では、法及び指針の遵守も含め、臨床研究の基本ルールに関する研修・教育を継続して実施 し 、研究者の臨床研究マナー習得に注力してきた (資料1 中「 別添資料7 」 。今回の不適合事案と同様のこと は、今後も他の研究においても発生する可能性はあるこ
とから、当該報告書の再発防止策に加えて、研究実施に関する支援も含めて研究者の実務を考え、次の支援や教育の充実を図る。


 ア 支援
  ① 適切なアウトカムに応じた研究計画書の作成支援
  ② 症例登録プロセス、 CRF、ワークシート等の作成に関する支援
  ③ 研究者によるスタートアップミーティングの開催とY-NEXTの支援


 イ 教育
  ① アに記載した研究計画書作成、 症例登録プロセス、CRF、ワークシート等の作成に関する教育
  ②データマネジメントの重要性に関する教育
  ③品質マネジメントシステム QMS Quality Management System)の重要性に関する教育
  ④不適合の事例と再発防止策の学内での情報共有
 座学セミナーだけではなく、実際の研究現場において業務を通して行う教育訓練(OJT:On The Job Training)について可能な限り支援を行い、研究の理解を深める。
 上記支援・教育の充実化のため、各部署(教育研修室、研究開発支援室、臨床試験データ管理室、統計解析室、臨床試験管理室、信頼性保証室、事務室)との連携を密にして、研究者が困っていることや研究者にとって必要な事項等を共有化できる体制を整え、定期的な協議を開始した。

(2)モニタリング体制強化
 適切なモニタリングの実施により、特定臨床研究や侵襲を伴う介入研究における 研究計画書からの逸脱の早期発見及び再発防止、臨床研究の品質管理を図る。
 ア モニター養成研修の充実 (オンサイトモニタリングを対象)
 大学では、モニター養成研修を実施し、継続又は新規モニター教育を行なって受講者のみがモニタリング担当者となれることとする。 モニタリング指名の際には受講歴を確認しているが、実施中又は新規の研究でモニター担当を行う者が研究期間を通してモニタリング養成研修を受講しているかを確認し、 モニタリング研修の有効期限が切れているモニタリング担当 者には受講をするよう働きかける。研修当日に受講できない場合に備え、引き続き研修内容を動画でも提供できるようにする。 診療科に1名以上の受講者配置となるよう診療科責任者や診療科の臨床研究指導員にも働きかける。
 モニター養成研修が必要なモニタリング担当者は、医師に限らず看護師、薬剤師は診療科の秘書等臨床研究に興味がある者や診療科内で臨床研究の支援を行いたい者なども対象 とし、対象に合わせた研修内容を工夫する。
 また、研究者が実際の研究を基にしたコーチングを希望する場合は、Y-NEXT職員がモニタリングに同席し支援することで研究者自身が研究のモニタリングを行える体制構築を強化し、 支援件数を広げられるように努める。


 イ 中央モニタリングの体制強化
 中央モニタリングは、 試験データを中央で一括管理・分析・評価し、その情報を基に確認を行うモニタリング手法である。 当該手法を実施するには研究計画書の十分な理解等の事前準備が必要であり、 研究責任医師及びモニタリング担当者は十分な知識が必要である。
Y-NEXTにおいて、中央モニタリングの手法等教育を行うこと、またインターネットを使い電子的に臨床データを収集すること(EDC:Electronic Data Capture) 等の利用の支援の検討を行う ことなど体制強化を行う。


 ウ モニタリング担当の配置
 附属病院では、臨床研究の品質管理を担保するために、Y-NEXTにモニタリングを専従する担当者を次年度から配置する。研究者からモニタリング依頼を受け入れられる体制又は支援できる体制の構築を強化する。支援できる研究数には限度があるため、引き続きモニタリング支援については 雇用の追加や外部委託等の検討を行う。


 エ モニタリング実施状況の管理
 法及び指針では、モニタリングが実施された場合、モニタリング担当者は研究責任医師に報告する義務が規定されている。
大学では、研究責任医師に報告されるモニタリング報告書について、 臨床研究の定期報告書又は実施状況報告書と一緒に添付して提出することを義務化する。
 添付されたモニタリング報告書は、Y-NEXTで当該報告書の内容の確認を行い、各臨床研究 における モニタリング実施状況を把握し管理する。その上で、CRB等の倫理委員会にモニタリング実施状況の報告を行い、意見を聞くことができるものとする。

(以下原文参照)

引用元

https://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~ynext/wp/wp-content/uploads/2023/02/futekigo_202201.pdf